生活防衛

医療費控除とセルフメディケーション税制、両方申告すればもっと得するのでは?

2026年8月31日 By NTM Editorial
#医療費控除#セルフメディケーション税制#確定申告#所得控除#家計防衛
NTM 生活防衛ファイル

「医療費控除」は1つの制度で、その中の二択がセルフメディケーション税制

病院代のレシートと薬局のレシートを両方集めても、控除は2倍にはならない。国税庁のタックスアンサーには「選択適用」と明記されており、どちらか一方しか使えない仕組みになっている。

通常の医療費控除の下限額 10万円(総所得200万円未満は5%)
セルフメディケーション税制の下限額 1万2,000円
通常の医療費控除の上限額 200万円
セルフメディケーション税制の上限額 8万8,000円

2つは別制度ではない

セルフメディケーション税制は「医療費控除の特例」という位置づけで、通常の医療費控除と選択適用になる。両方を同じ年に受けることはできない。

下限額の差が逆転を生む

通常控除は10万円を超えないと1円も引かれないが、セルフメディケーション税制は1万2,000円を超えれば控除が始まる。少額の年は後者が有利になりうる。

上限額の差は大きい

通常控除は200万円まで積み上がるが、セルフメディケーション税制は8万8,000円が天井。医療費が高額な年は前者が圧倒的に有利。

一度選ぶとやり直せない

確定申告でどちらかを選択した後、更正の請求や修正申告で他方に切り替えることは国税庁の説明上できないとされている。
NT Media 結論
「たくさん引けそうな方」を見極めるには、自分の医療費のうちどこまでが対象になるかを先に仕分ける必要がある。
NTM ニュース整理

公開後の訂正(2026年9月25日)

公開時の説明には、一定の取組を証明する書類を申告時に用意する必要があるように読める箇所がありました。厚生労働省の案内に沿って、申告時の添付・提示は不要で、申告期限等から5年間保管する旨に訂正しました。2027年以降の対象医薬品がスイッチOTCだけではない点も反映しています。

医療費控除は「治療にかかった実費」を広く拾う制度

国税庁の説明によれば、医療費控除の対象となるのは「自己または生計を一にする配偶者・親族のために、その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費」で、控除額は(実際に支払った医療費の合計額-保険金等で補填される金額)-10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)という式で計算され、上限は200万円になる。対象になるのは病院・歯科医院での診療費、治療のために処方された医薬品代、通院にかかった交通費などで、健康診断や人間ドックの費用(結果的に重大な病気が見つかり治療につながった場合を除く)、病気の予防やビタミン補給が目的の医薬品、美容目的の費用は対象外とされている。

項目内容
対象になる例病院・歯科の診療費、治療のために処方された医薬品、通院の交通費、治療目的の市販薬
対象外になる例健康診断・人間ドック(異常なしの場合)、予防・健康増進目的のビタミン剤、美容目的の施術
下限額10万円と総所得金額等の5%のうち低い方
上限額200万円

この制度を受けるには、給与所得者であっても確定申告が必要になる。年末調整だけでは処理されない所得控除で、医療費の明細書を作成して確定申告書に添付するか、確定申告期限から5年間は領収書の提示・提出を求められる場合がある。

aiko
aiko

毎年病院に何十万も払ってる人ばっかり得する制度ってことじゃな。うちみたいに薬局で頭痛薬とか胃薬をちょこちょこ買うだけの家は、結局10万円なんて届かんのじゃない?

sa-tan
sa-tan

そうなんです。実は国もそこを見込んで、10万円に届かない人向けに別の入口を用意してるんですよ。それが次に話すセルフメディケーション税制で、下限がぐっと下がるんです。

セルフメディケーション税制は「薬局のレシート」専用の別入口

セルフメディケーション税制は、医師の処方薬がドラッグストアで買える市販薬に転用された「スイッチOTC医薬品」等の購入費を対象に、年間1万2,000円を超えた部分(上限8万8,000円)を所得控除できる、医療費控除の特例である。対象商品にはレシートや商品パッケージに識別マークが表示されている。

適用を受けるには、その年に本人が「健康の保持増進および疾病の予防への取組」を行っている必要がある。国税庁は具体的な取組を次の6項目に整理している。

✅
保険者(健康保険組合・市区町村国保等)が実施する健康診査(人間ドック・各種健診等)
✅
市区町村が健康増進事業として行う健康診査(生活保護受給者等向け)
✅
予防接種(定期予防接種・インフルエンザワクチンなど)
✅
勤務先で実施する定期健康診断(いわゆる事業主健診)
✅
特定健康診査(メタボ健診)・特定保健指導
✅
市町村が健康増進事業として実施するがん検診

取組を行っていない年は、対象医薬品をいくら買っても控除は受けられない。取組を証明する書類は確定申告書への添付・提出は不要だが、税務署から確認を求められる場合に備え、確定申告期限等から5年間保管する。人間ドックそのものの費用はこの特例の対象には含まれず、あくまで「取組をした証明」として扱われる。

aiko
aiko

待って、ただ薬局でスイッチOTC買うだけじゃダメで、健康診断とか予防接種も別に受けてないと使えんのか。知らんかったら普通に損しとるやつじゃな。

sa-tan
sa-tan

はい。会社員なら勤務先の定期健康診断も対象の取組です。証明書類は申告時に添付しなくてよいものの、税務署から求められる場合があるので、申告期限等から5年間は保管しておく必要があります。

なぜ両方は使えないのか

国税庁タックスアンサー No.1131(令和7年4月1日現在法令等)

「セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であり、通常の医療費控除との選択適用となりますので、いずれか一方を選択して適用することになります。したがって、セルフメディケーション税制の適用を受けることを選択した納税者は通常の医療費控除を受けることができず、通常の医療費控除を受けることを選択した納税者はセルフメディケーション税制の適用を受けることはできません。」

つまり両者は2つの独立した制度ではなく、1つの「医療費控除」という制度の中にある二択にすぎない。しかも国税庁の同じ資料は念を押すように、セルフメディケーション税制を選んだ場合、対象となる特定一般用医薬品等購入費以外の医療費(通院費など)が通常の医療費控除の下限額を超えていたとしても、通常の医療費控除を併せて受けることはできない、としている。さらに一度どちらかを選んで確定申告書を提出すると、その後に更正の請求や修正申告でもう一方へ切り替えることはできない、と明記されている。根拠となる法令は所得税法73条・租税特別措置法41条の17である。

関連: ふるさと納税の上限、年収さえ見れば決まると思っていませんか?

aiko
aiko

えっ、じゃあ「とりあえずセルフメディケーションで出しといて、あとで病院代の方が高かったって気づいても」もう変更できんの?

sa-tan
sa-tan

できないんです。だから出す前にどちらが多く引けるかを計算しておく必要があって、それが次の話になるんですよ。

結局どちらが得なのか——編集部で3パターン試算した

上で確認した2つの計算式に、実際の医療費の内訳を当てはめると、どちらが得かは「病院代など通常の医療費がどれだけあるか」と「そのうち市販薬(スイッチOTC)がどれだけを占めるか」の比率で決まる。以下は国税庁が公表している計算式(前述)どおりに編集部で試算した例で、実在の申告事例ではない。総所得金額等は200万円以上(下限額は一律10万円)を前提にしている。

通常の医療費控除が有利なパターン
セルフメディケーション税制が有利なパターン
通院・治療費 20万円+処方薬5万円+スイッチOTC 1.5万円=計26.5万円
通院・治療費 3万円+処方薬2万円+スイッチOTC 2.5万円=計7.5万円
通常控除:26.5万円-10万円=16.5万円
通常控除:7.5万円は10万円未満につき0円
セルフメディケーション:OTC分1.5万円-1.2万円=3,000円
セルフメディケーション:OTC分2.5万円-1.2万円=1.3万円
✅ 通常控除(16.5万円)を選ぶべき
✅ セルフメディケーション(1.3万円)を選ぶべき
3つ目:どちらも僅差のパターン

通院・治療費8万円+処方薬2万円+スイッチOTC1.8万円=計11.8万円の場合、通常控除は11.8万円-10万円=1.8万円。セルフメディケーションはOTC分1.8万円-1.2万円=6,000円。この水準ではまだ通常控除がやや有利だが、通院費がもう1〜2万円減れば逆転する。

目安は「通常の医療費(OTCも含めた全体)が10万円をどれだけ超えているか」と「そのうちOTCの取り分」の2つを、確定申告の前に両方の式へ当てはめてみることに尽きる。OTC医薬品しかレシートがない年、あるいは通院費が少ない年はセルフメディケーション税制、入院や手術など通院費がかさんだ年は通常の医療費控除が有利になりやすい。

aiko
aiko

なるほどのう。じゃあ「毎年同じ方を選んでおけば安心」ってわけでもなさそうじゃな。

sa-tan
sa-tan

そうなんです。同じ人でも、大きな病気をした年としてない年で有利な方が入れ替わることがあるので、確定申告のたびにレシートを仕分けて両方計算してから選ぶしかないんですよね。

医療費控除については、別記事でふるさと納税との関係も扱いました。医療費控除を受けるために確定申告をすると、先にふるさと納税のワンストップ特例を申請していても、その申請が自動的に無効になってしまうんです。ワンストップ特例を使っている人は、医療費控除の申告を検討するときにこの点もあわせて確認しておいた方がいいですよ。

令和8年12月末で切れるはずが、一部だけ延長が決まっている

セルフメディケーション税制は平成29年(2017年)1月1日に創設された時限措置で、国税庁のタックスアンサー(令和7年4月1日現在法令等)でも適用期限は令和8年(2026年)12月31日までとされている。今年12月末で制度そのものが終わるように見えるが、厚生労働省が公表した「令和8年度税制改正の概要」(令和7年12月)によれば、令和8年度税制改正大綱で期限の見直しが既に決まっている。

2017年1月〜
セルフメディケーション税制が創設。当初から時限措置として設計された。
現行法(令和7年4月1日現在)
適用期限は令和8年(2026年)12月31日まで。国税庁タックスアンサー No.1129・No.1120に明記。
令和8年度税制改正大綱(令和7年12月公表)
スイッチOTC医薬品分は適用期限そのものを撤廃(恒久化)。それ以外(非スイッチOTCの一部・OTC検査薬・薬局製造販売医薬品)は5年延長。対象品目に消化器官用薬・生薬のみからなる鎮咳去痰薬などを追加し、痩身・美容目的の医薬品は除外。適用は令和9年(2027年)以降の所得から。

つまり、2026年分の申告まではこれまでどおりの制度が生きており、2027年分からは対象品目の入れ替えを伴った延長版に切り替わるという段階になっている。公開時点(2026年8月31日)は改正の詳細(対象医薬品の追加・除外リスト)を今後反映する見込みとしていたが、2026年9月24日現在、厚生労働省の公式ページで令和9年1月1日施行の改正後法令と令和8年9月1日時点の対象品目一覧が公開されている。2026年分は現行の対象品目、2027年分は改正後の対象品目一覧と購入時のレシート表示を確認して申告する段階に進んでいる。

関連: 給付付き税額控除って、バラマキと何が違うんですか?

aiko
aiko

今年で終わると思って駆け込みで薬局レシート集めてる人がおったら、実はそこまで焦らんでよかったってことじゃな。

sa-tan
sa-tan

スイッチOTC医薬品に関してはそうですね。ただ対象品目の入れ替えは実際にあるので、2027年分からは今まで対象だった商品が対象外になったり、逆に新しく対象に入ったりする可能性があります。毎年、購入時のレシートに識別マークが付いているかを都度確認するくせをつけておくのが一番確実だと思います。

NTM ニュース整理

試算の前提と確認先

試算は制度の選択を比べるための仮例です。実際に選ぶときは、家族分を含む支出や保険金などの補填額も整理してから、国税庁の確定申告書等作成コーナーで自分の数字を試算してください。

aiko aikoが飲み込んだところ

わしなら申告前にレシートを分けて、二つの式を並べてみるところから始めるのう。去年の選択をそのまま使い回すと、今年の医療費の内訳を見落としそうじゃ。


主な参照資料:

the NTM Core Engine 参考文献・検証プロセス
S 80pt
PENDING Audit PENDING_MANUAL_REVIEW
7 一次情報
0 二次情報
参考文献・検証ログ 7件
Score Breakdown 80pt
Traceability 35/35
本文から根拠へ辿れる度合い
Diversity 10/25
出典の広がり
Evidence 20/25
根拠の強さ
Domain Bonus 15/15
一次資料・公的資料の補強
the NTM Core Engine review note

参照は 7 本あります。監査はまだ保留で、公開前の確認が残っています。

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更新・訂正履歴 訂正 2

訂正履歴

  • 2026-09-24: 公開後レビューで厚生労働省の令和9年1月1日施行の改正後法令と令和8年9月1日時点の対象品目一覧を確認し、公開時点の『今後確定情報として反映される見込み』に現在の確認状況を追記。
  • 2026-09-25: 厚生労働省の証明方法案内を再確認し、一定の取組の証明書類は申告時の添付・提示が不要で、求められた場合に備えて申告期限等から5年間保管する旨を明記。2027年以降の対象範囲もスイッチOTCだけに限らない表現に修正。

参考資料